人間失格 / 太宰治 直接心臓に触れられているかのような感覚
こんにちは!
今日はあまりにも有名な一冊をご紹介します。
あまりにも有名だし、紹介しなくてもみんな知っているとは思いますが、
私の思春期に絶大な影響を与えてくれた一冊なので…
読書感想文として読んで頂けたらこれ幸い!なスタンスで書きます。
人間失格 / 太宰治 (新潮文庫)
あらすじ
後半が自殺以後に発表された、太宰文学の総決算ともいうべき作品。生きる能力を失い、なりゆきに任せ、廃人同様に生きる男の手記……それはこの世を去るに際してこれまで胸底にひた隠しに隠していた自分の正体を書きのこした陰惨な自画像ともいうべきものである。「いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」 『人間失格』太宰治 より引用
感想
みなさん、太宰治読んだことありますか?
読んだことはなくても、名前は知っている人が大半ですよね。
国語で習うし、彼の人生はなかなかエキセントリックなので印象に残りやすいかと。
そして太宰の作品の中でもひときわ有名なのが、この「人間失格」ではないでしょうか。
彼の完結作としては最後の作品。
太宰の自伝的作品と世間では言われているため、彼の「遺書」としての扱いを受けている本作。(※諸説あります。)
私がこの作品を初めて読んだのは、中学1年か2年生くらいの思春期ど真ん中のころです。
当時は上記に挙げたようなこの作品の予備知識はほとんど無く、
太宰自身に関しても授業で習ったことの中で印象が強かった、
「愛人と入水自殺した人」くらいの知識しかありませんでした。
たまたま家の本棚にあったので読んでみようかなと手にとっただけでした。
そんな無垢な状態で読んだのが逆に良かったのかと今になれば思います。
少しこの本の内容を紹介すると、
この話の主人公は大庭葉蔵という男で、この作品は彼の年代別の3つの手記で成り立っています。
第一の手記の冒頭の、
「恥の多い生涯を送ってきました。」という一文はかなり有名ですね。
この話は一言でいうと、葉蔵がどんどん転落していく様を描いた作品です。
タイトルから察する通りの暗い作品です。
ええ、もう真っ暗です。
走れメロスとは大違いです。
私が当時この本を読んで真っ先に思ったこと、
それは「今までなんてなまぬるい読書をしてきたのだろう」でした。
ガチでそう思いました。
この本を読んで、直接心臓に触れられているかのような感覚を覚えたのです。
ゾッとしました。ホラーじゃないのに。
人間の汚い部分や弱い部分をこんなにあからさまに書くなんて!
「お前にもこんな汚いところあるだろ?」って見透かされたような気がしました。
私が中学生の時に特にゾッとした部分を紹介します。
第二の手記で、中学生の葉蔵が体操の時間に鉄棒をする際、
ワザと失敗をして(自然に失敗したように装って)みんなの笑いをとろうとしたところ、
同じクラスの竹一という少年に、
「ワザ。ワザ」と囁かれ、震撼する。というシーンがあります。
葉蔵は道化を演じることで自分のアイデンティティーを保っていたのに、
竹一にそれを覆され、さらに今までワザと道化を演じていたことを言いふらされるのではと慄く。
非常に人間らしさ溢れるシーンで、大人になってみると、
「うんうん、そういうことってあるよね☆」ぐらいの感想で過ぎていくと思います。
しかし、中学生の私は、
「ぎゃー!なにこれ超恥ずかしぃぃぃーーーーーー!!!!!」
と葉蔵と同じく慄きました。
恥ずかしくて見てられない!と。
この後彼の人生はどんどん転落していき、もっと深刻なことに陥るのですが、
一番印象に残ったのはこのシーンだったというのが、とても面白い。
太宰は、こういう人間の弱い部分を描くのがとても上手です。
彼自身、感受性が強く、弱い人間だったのでしょう。
何しろ自殺未遂を繰り返し、薬物依存に苦しみ、愛人をたくさん作り、結局最後は愛人と自殺。
というとてもじゃないけど尊敬できない生き方。
むしろほんと無理!ってかんじです。
でもそんな太宰が書くからこそ、伝わるのかなと思います。
ちなみに私はこの本を中学生の時から何度も再読しているのですが、
どんな時に読みたくなるかというと、落ち込んだときです。
そんなときにこれを読むと、なぜか浮上できるのです。
起爆剤的なかんじですね。
こんな人生の人もいるのだから、まだまだ私は頑張れると思えるのか、
こんな風になりたくないと思うのか、何なのか今だ分かりませんが…
結論を言うと、この本はたぶん一生私の本棚にいる、ということです。
思い入れが強すぎてかなり長くなってしまいました。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
みなさんに効くかは保証できませんが、
落ち込んだときにぜひ読んでみてください!
(※それで更に落ち込んだとしても責任は取れません。)
この名作読まなきゃ損ですよ。
ではまた!