犬耳LOG

その日の気分で選んだ本をゆる~く紹介 (時々、漫画)

官能的な文章で紡がれる 『雪国』 川端康成

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お疲れ様です!

今日は、川端康成の『雪国』を紹介します。

季節は夏ですが、冬の物語もまた一興ということで…

 

雪国 / 川端康成 (角川文庫)

 

 

あらすじ

頑なに無為徒食に生きて来た主人公島村は、半年ぶりに雪深い温泉町を訪ね、芸者になった駒子と再会し、「悲しいほど美しい声」の葉子と出会う。人の世の哀しさと美しさを描いて日本近代小説屈指の名作に数えられる、川端康成の代表作。『雪国』表紙裏より

 

登場人物

島村 ・・・ 東京の下町出身。親譲りの財産で無為徒食に暮らす。東京に妻子あり。

駒子 ・・・ 雪国の温泉町の芸者。

葉子 ・・・ 温泉町出身の娘。元看護士。行男の恋人。

行男 ・・・ 病人。結核を患い温泉町に帰郷する。

 

感想

有名な冒頭

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。 信号所に汽車が止まった。 『雪国』より

この有名な書き出しで始まる本作。

冒頭からすでに名作のかほりがぷんぷんしますね。

「夜の底が白くなった。」

美!の一言でございます。

これぞ声に出して読みたい日本語。

日本人に生まれたのに美しい日本語に触れないなんて、そんな勿体ないことは無いです。

川端康成の文章は本当に美しい。

またこの作品は川端がノーベル文学賞を受賞した際の審査対象になった作品でもあります。

 

主人公はニート

主人公の島村は、無為徒食に生きることを信条に生きている男。

無為徒食ってあまり聞かない言葉ですよね。

無為徒食とは、

  1. 何もしないで、ただ無駄に毎日を過ごすこと。意味もなく時間を費やすこと。▽「無為」は何もせず、人の手を用いないこと。「徒食」は働くこともせず、無駄に日を送ること。

    無為徒食の意味 - 四字熟語一覧 - goo辞書

     

…ん?無為徒食って現代で言うところのニートなのではないだろうか。

なんて贅沢なご身分!!!!

まあ島村にはニートという言葉はそぐわない。

どちらかというと高等遊民という言葉が似合う。

資産家で教養があり、東京に妻子がいるが、「雪国」の温泉宿に長期逗留できる身分ですからね。

そしてこの物語は、その「雪国」(新潟だそうです。)を舞台に描かれる、島村と芸者の駒子の男と女の物語です。

 

トンネルを境に分けられる現実と夢

冒頭の有名な一文に出てくる「トンネル」。

この「トンネル」がこの作品では重要な役割を果たしています。

島村にとって、妻子がいる東京は現実世界。

駒子のいる雪国が夢の世界。

それを繋ぐ、というか「分けて」いるのがこの「長いトンネル」。

島村にとってはこのトンネルがいわゆるスイッチ的な役割を果たしているわけです。

そういえば「千と千尋の神隠し」でも、千尋がトンネルを抜けて異世界に行っていましたね。

 

官能的な文章で紡がれる女性心理

川端康成の文章はとっても官能的。

男女の営みのシーンだって、全くもって直接的な表現はありません。

しかし直接的な表現をするよりよっぽど官能的なんです。

前に知人が、高校生の頃に川端文学にハマり、いつもドキドキして読んでいた、

と言っていたことを思い出します。

この話は簡単に言ってしまえば、島村と駒子の痴情の物語です。

正直、この島村には全く惹かれないし、絶対好きにならないタイプですが(だって不倫男だし)、

島村に惹かれている駒子の心情心理にはハッとするものがあります。

川端康成は駒子の内面を非常に緻密に描いていて、それをお得意の美しい文章で描いているものだから、とても惹き込まれてしまう。

後半に、島村のある言葉を駒子が聞き違えて(というか島村の本意とは異なる解釈をして)怒るというシーンがあるのですが、数年前に読んだときはなんで怒ったのかイマイチ理解できませんでした。

しかし最近再読した際、昔読んだ時よりは、少しは理解できたように感じました。

もうちょっと年を取った時に、自分がどういう風に感じるか、非常に楽しみです。

 

おわりに

今日は、名作中の名作、『雪国』を紹介しました。

エンターテイメント性の強い作品が巷に溢れている中、

たまには純文学に触れてみるのもいい刺激になります。

「美しい日本語」は、読むだけでとても豊かな気持ちになります。

 

 

川端康成 <1899-1972>

1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。
一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行、旅芸人の一行と知り合う。以降約10年間毎年、伊豆湯ヶ島湯本館に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋でガス自殺を遂げた。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。

 

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