様々な問題に果敢に立ち向かう広報官!『64』 横山秀夫
こんにちは!
今日は、現在映画が絶賛公開中の『64』を紹介します。
映画を観た友人や家族の評判はなかなか上々なようです。
観に行きたいな~。
64 / 横山秀夫 (文藝春秋)
あらすじ
昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、刑事部と警務部が全面戦争に突入。広報・三上は己の真を問われる。究極の警察小説!
登場人物
警務部
- 三上義信 ・・・ D県警察本部 警務部秘書課調査官〈広報官〉。
- 諏訪 ・・・ 警務部秘書課係長。
- 蔵前 ・・・ 警務部秘書課主任。
- 美雲 ・・・ 警務部秘書課 最年少の婦警。
- 赤間肇 ・・・ D県警警務部長。
- 二渡真治 ・・・ D県警警務部警務課調査官。三上の同期。
- 松岡勝俊 ・・・ D県警捜査一課長部長。
- 荒木田 ・・・ D県警刑事部長。
ロクヨン関係者
- 雨宮翔子 ・・・ 昭和64年1月5日に、何者かに攫われる。10日に市内の廃車置き場で遺体で発見される。当時7歳。
- 雨宮芳夫 ・・・ 翔子の父親。
マスコミ
- 秋川 ・・・ 東洋新聞キャップ。29歳。D県警記者クラブのボス格。
- 山科 ・・・ 全県タイムス暫定キャップ。
その他
- 三上美那子 ・・・ 義信の妻。
- 三上あゆみ ・・・ 義信の娘。失踪中。
感想
刑事ではなく、広報官
この作品の舞台はD県警。
主人公は、D県警の警務部広報官・三上。
この物語の面白いところは、東京ではなく、地方の県警。刑事ではなく、広報官が主人公。というところです。
この作品はD県警シリーズの第四作目だそうで、横山秀夫は刑事ではなく事務官を主人公に据えることの多い作家さんです。
花形の刑事ではなく事務官が主人公のミステリってなかなか珍しいですよね。
様々な問題に翻弄される主人公
この作品、三上がとにかくいろいろな問題に翻弄されます。
まず第一に、三上の娘・あゆみが現在失踪中なのだ。
全国の警察組織に協力を仰いでいるが未だ見つからない。
そして、その協力を人質にとられ、上司の警務部長の赤間の犬にならざるを得ない状況に追い込まれる三上。
それは元刑事で、異例の人事で広報官になった三上にとっては屈辱でしかない。
彼は元刑事という経験を活かし、新しい広報室・記者との関係を築き上げていた矢先の出来事であった。
赤間の言う通り、交通事故の加害者を匿名で発表した三上は、記者クラブの猛反発を受け、匿名問題に発展してしまう。
そして、D県警史上、最大の汚点・通称64(ロクヨン)という未解決事件の存在。
64とは、昭和64年のたったの7日間の間に起きた、少女誘拐殺人事件だ。
未だに未解決のこの事件は時効が迫っていた。
そして、警視庁長官がこの64の視察に来ることに決まった。
広報官として、その視察を成功させるために走り回る三上。
しかし、刑事部・警務部それぞれの不審な動きに疑問を抱く。
三上よく過労死しないな!と思いながら読んでおりました。
これだけの問題を抱えながら、しかも娘は失踪中だし、読んでいるだけで胃がきりきり。笑
かなりたくさん問題ありますが、読み進めていくとさらに増えていきます。
後半、ページを捲る手が止まらない
こんなに問題を盛り込んでまとまるの?大丈夫?と勝手に心配していましたが、
さすが横山秀夫ですね。
後半の畳みかけるような展開!
ページを捲る手が止まりませんでした。
最後、いろいろな謎が一本の線に繋がって行ったとき、鳥肌が立ちました。
そしていろいろな問題を解決していく三上の人間力に脱帽です。
熱い男、最高!
重厚だけど読み易い横山作品
警察組織の話なので、もちろん重厚感があり、それがまたこの作品の魅力でもあります。
しかし、重厚な作品は苦手という人もいるかと思います。
しかし横山作品、重厚な世界観を保ちながら読み易いという奇異な作品です。
警察小説をあまり読んだことがない人に胸をはってオススメできる作品です。
おわりに
様々な問題が組み込まれている本作。
著者が読者に伝えたい、という熱い想いがこもっているようでした。
600ページ強という長編ですので読み応えも抜群です。
♦横山秀夫 <1957->
1957年東京生まれ。国際商科大学(現・東京国際大学)卒業後、上毛新聞社に入社。12年間の記者生活を経てフリーライターとなる。91年『ルパンの消息』が第九回サントリーミステリー大賞佳作に選ばれる。98年『陰の季節』で第五回松本清張賞を受賞。2000年『動機』で第五十三回日本推理作家協会賞・短編部門を受賞する 。