蝉しぐれ / 藤沢周平 美しい情景に心が洗われる
こんにちは!
今日はこのブログで初めて、時代小説を紹介したいと思います。
梅雨のじめじめした気分を吹き飛ばしてくれる清々しい小説です。
蝉しぐれ / 藤沢周平 (文春文庫)
あらすじ
朝、川のほとりで蛇に咬まれた隣家の娘をすくう場面からはじまるこの物語、舞台は藤沢読者になじみ深い海坂藩である。清流と木立に囲まれた城下組屋敷。淡い恋、友情、そして悲運と忍苦。ひとりの少年藩士が成長してゆく姿をゆたかな光のなかで描いたこの作品は、名状しがたい哀惜をさそわずにおかない。 『蝉しぐれ』藤沢周平 より引用
感想
こちら、映画化もした作品で、藤沢周平の代表作なので知っている人も多いのではないでしょうか。
私がこの本に出会ったきっかけは、中学時代の国語の教科書に
この物語の冒頭部分が載っていたことでした。
教科書のたった数ページでしたが、藤沢周平の紡ぎだす清々しい文章のファンになってしまいました。
この物語のあらすじをもう少し詳しく紹介したいと思います。
主人公は牧文四郎という15歳の少年。
文四郎は牧家の養子で、牧の家の母親が実父の妹で(つまり叔母)、父とは血の繋がりがないのだが、文四郎はこの父を非常に尊敬している。
父は海坂藩(うなさかはん)の藩士である。
(※海坂藩は藤沢周平が創作した架空の藩で、彼の出身地の山形鶴岡の庄内藩がモデルになっていると言われている。この架空の海坂藩を舞台にした小説がいくつかある。)
牧の家の隣家には、ふくという名の12歳の娘がいて、文四郎とは幼馴染のような存在だ。
両家の裏には小川が流れていて、それは顔が洗えるほど美しく、文四郎は晴れた朝にはいつもその清流で顔を洗う。
ある朝も、文四郎は顔を洗いに小川に出ると、隣家のふくが小川で洗い物をしていた。
文四郎はふくに挨拶をするが、ふくは頭を下げるだけで、そっけない。
1年前くらいから、ふくは文四郎に対しそっけない態度をとるようになったのだが、
文四郎には何も思い当たる節がない。
突然、ふくが悲鳴をあげる。どうやら蛇に噛まれたようだ。
文四郎は咄嗟に家と家の垣根を飛び越し、ふくのもとに駆け付けた…
この後の展開を、久しぶりに引用します!(ほんとに久しぶり!)
「どうした?噛まれたか」
「はい」
「どれ」
手をとってみると、ふくの右手の中指の先がぽつりと赤くなっている。ほんの少しだが血が出ているようだった。
文四郎はためらわずにその指を口にふくむと、傷口を強く吸った。口の中にかすかに血の匂いがひろがった。ぼうぜんと手を文四郎にゆだねていたふくが、このとき小さな泣き声をたてた。 『蝉しぐれ』p13より引用
この、ふくが蛇に噛まれ文四郎が助けるところからこの物語は始まります。
文四郎がこのとき15歳。この少年藩士が成長していく様を描いている物語です。
もちろん、文四郎とふくの人生もところどころですれ違っていきます。
この二人がこのあとどうなっていくのか、そこもポイントです。
ところでどうしてふくが文四郎にそっけない態度をとるようになったのかって、
そりゃぁ~決まってるじゃないですか!ねえ?
それにしてもふくは奥ゆかしいし、文四郎は非常に男らしい。
私はこの小説を読んで、文四郎にほとんど恋しちゃいました。
それにしても文体がほんとに美しい。藤沢周平の文章を読むと、心が洗われる。
さあっと爽やかな風が吹き抜けていくような清々しさあります。
大好きです。
ぜひ、藤沢周平の美しい文章を味わってみてください。
それではまた!