幻想世界に酔いしれる 『太陽の庭』 宮木あや子
こんにちは!
今日は読み手を別世界に連れて行ってくれる本を紹介します。
太陽の庭 / 宮木あや子 (集英社文庫)
あらすじ
一般人には存在を知られず、政財界からは「神」と崇められている、永代院。地図に載らない広大な屋敷に、当主の由継を中心に、複数の妻と愛人、何十人もの子供たちが住まい、跡目をめぐって争っていた。そんな中、由継の息子・駒也は、父の女・鞠絵に激しく惹かれてゆく。許されぬ愛は、やがて運命の歯車を回す。破滅の方向へ―。「神」と呼ばれた一族の秘密と愛憎を描く、美しく、幻想的な物語。
『太陽の庭』宮木あや子 より引用
感想
‟女による女のためのR-18文学賞” を受賞した吉原で生きる遊女のお話でした。
綺麗で官能的な物語で、とても魅力的な小説でした。
読んだことがある人も多いのでは?
今日紹介する『太陽の庭』は、宮木あや子さんのこれまでの官能的な作品とは少し毛色の違う作品です。
官能的な要素もあるのですが、それよりかは耽美な幻想小説といった印象を受けました。
この物語は、「永代院」という、日本の政財界から「神」と崇められている一族にまつわるお話です。
章ごとに主人公が入れ替わり、それぞれの目線からみた「永代院」が描かれています。
前半は「永代院」の中の人間の目線、後半は外部の人間からの目線で物語が進行していきます。
第一章の主人公は、永代院の中の人間、駒也という少年が主人公。
駒也は、現在の永代院の当主の妾の息子である。
そもそも永代院とは何なのか?
- 東京都内に存在するが、日本地図に載っていないため一般人は存在を知らない
- しかし銀座あたりで客待ちをしている比較的年老いた運転手なら知っている
- 常時数百人の規模の人が住んでいる広大な屋敷
- 永代由継という当主とその妻たち、子供たちが住んでいる
いわゆる一夫多妻制。現代の大奥というような存在。
永代院の中では江戸時代の大奥のように跡目争いが繰り広げられている。
駒也の母は若くして亡くなっているが、当主からかなりの寵愛を受けていたため、
駒也も父から溺愛されている。
しかし駒也は、新しく来た父の女、鞠絵に惹かれてゆく…
うん、このドロドロで耽美で神秘的な設定、大好物です!
こんな設定だと下世話な三文小説になりがちかなと思うかもしれませんが、
宮木あや子の手にかかると、それが耽美な幻想小説へと昇華されるのがすごいです。
そして、なぜ永代院がこんなに力を持っているのか。
その存在意義とは何なのか。そしてその行く末は?
これらの謎が物語が進むにつれ分かっていきます。
後半は外部の目線で進んでいくので、一気に現実世界に戻ります。
そこが賛否両論があるみたいですが、私は面白い構成だなと思いました。
また、作者の他の作品『雨の塔』とリンクしているので、
合わせて読むとまた面白さ倍増だと思います。
ぜひぜひこの耽美な幻想世界に酔いしれてみてください。
ではまた明日~