シリアスなテーマを軽快なタッチで描く 『重力ピエロ』 伊坂幸太郎
こんにちは!
今日は読書感想を書きます!
安定の面白さ、伊坂幸太郎の作品です。
何気にこのブログで初登場です。
重力ピエロ / 伊坂幸太郎 (新潮社)
あらすじ
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。 『重力ピエロ』伊坂幸太郎 表紙裏より引用
感想
意外と初登場・伊坂幸太郎作品です。
安定の面白さ&彼の作品のいくつかは映画化もしているので知名度抜群の作家さんです。
この『重力ピエロ』も加瀬亮、岡田将生主演で映画化しています!
ストーリー
「春が二階から落ちてきた。」
という印象的な書き出しで始まるこの作品。
春とは四季の春ではない。
この物語の主人公・泉水の半分血の繋がった弟のことである。
物語の舞台は仙台。最近仙台では連続放火事件が話題になっている。
「兄貴の会社が放火に遭うかもしれない」と春から電話があった翌日、
兄の泉水の働く会社も被害は少なかったが放火された。
放火事件と同時に、最近市内ではグラフィティーアートの落書き被害が横行している。
弟の春は、こういう落書き消し専門の業者として仕事をしている。
泉水はなぜ放火が起こると分かったのか疑問に思い、仕事中の春に会いに行く。
すると春は「放火の起きるルールが分かった」と泉水に言う。
どうやらグラフィティーアートと関係しているらしい。
果たして放火事件の真相は?
細やかな伏線
伊坂幸太郎の特徴として、やはり伏線の細やかさが挙げられるのではないでしょうか。
ちょこちょこと伏線が張り巡らされていて、それが終わりに向けて絶妙な演出をしてくれる。
この演出が、読後のスッキリ感と満足感を高めていると思います。
最強家族
この『重力ピエロ』はミステリ作品ですが、同時に家族の話でもあります。
泉水と春の兄弟が半分しか血が繋がっていないわけは、この家族の辛い過去に所以するのですが、その過去を跳ね除ける家族の絆に感動します。
泉水と春は父親違い。
泉水が父親(春とは血が繋がっていない)に、「父さんは、春のことをどう思っているわけ?」と聞いた時に父が即答した返しがカッコいい。
「春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ。俺たちは最強の家族だ」
『重力ピエロ』p96
本当に最強家族。
私はこの作品の中でこの父が一番好き。
家族の在り方について考えるきっかけになる、そんな作品です。
泉水の引用癖
個人的にこの作品の好きなポイントとして、主人公・泉水の引用癖があります。
泉水は様々な作品の名文を会話の中で引用する癖があり、それが面白い。
泉水は博識なのか、私が読んだことがない本やトルストイとか古典から引用する為、
読んでみようかなという気になるのでとてもいいのです。
中には自分の知っている作品もあったりするので、それはそれで嬉しかったりする。
現実にこんなに会話で引用する人がいたらウザったいかもしれないが、これは小説なので全然あり!
終わりに
いかかでしたでしょうか?
この作品、ミステリとしても楽しめるし家族の話としても楽しめる、
そんな欲張りな仕様になっています。
ぜひ読んでみて下さい。
ではまたあした~♪