不穏な世界へようこそ!第27回山本周五郎賞受賞作品 『満願』 米澤穂信
こんにちは!
今日はミステリの短編集を紹介します!
第27回山本周五郎賞、2015年の「このミステリーがすごい!」第一位に輝いた作品です。
満願 / 米澤穂信 (新潮社)
あらすじ
人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは―。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなどが遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、ミステリ短篇集の新たな傑作誕生。 Amazon CAPTCHA
感想
全体的にかなり不穏でダークな6編でした。
ゾッとするようなお話。
ホラーではなくミステリなのですが。
収録作品
- 夜警 (交番勤務の警察官の話)
- 死人宿 (自殺の名所が近くにある旅館が舞台の話)
- 柘榴 (美しい姉妹の話)
- 万灯 (商社の在外ビジネスマンの話)
- 関守 (都市伝説を取材しているフリーライターの話)
- 満願 (下記で紹介しています)
上記6編 が収録されています。
全部グイグイと引き込まれるような作品たちですが、
今日はこの中のタイトル作品でもある「満願」を紹介します。
満願
主人公は弁護士の男。
今日は、学生時代お世話になった下宿先の奥さん・鵜川妙子が5年3か月の満期を経て出所する日だ。
妙子は殺人事件を犯し、男が弁護を担当した。
妙子は正当防衛で殺人を犯したとみられるため、少しでも罪を軽くしようと男は走り回ったが、ある日妙子は「もういいです」と、控訴を取り下げてしまう。
男は当時のファイルをめくりながら、彼女はもう長い間ずっと何かに囚われていた―と思いを馳せる。
***
まずタイトルが「満願」っていうのがいいですね。
この作品は、男が昔下宿先でお世話になった女性が起こした殺人事件を担当するのですが、
彼が下宿先に引っ越してきた日まで遡って、彼女との思い出を回想していきます。
この謎を解くヒントはこの物語の中にいくつか登場していて、
それが最後重要な役割を果たします。
「お~!」そうくるか~って思います。
この中の他の作品だと、「夜警」とか「死人宿」とかが特に謎解き要素の高い作品です。
自分で推理しながら読むのも楽しいと思います。
ダークな世界観
最初にちらっと言いましたが、ホラーではないのにゾッとする世界観です。
幽霊ではなく、生身の人間の怖さみたいな。
「柘榴」は好き嫌い分かれるのでは?と思うほど、女の怖さが描かれています。
このダークな世界観はすべての作品に共通していて、
物語のテーマは全部バラバラなのに、なぜか一貫した共通項を感じてしまう。
しかし不思議なのは不穏な作品たちなのに、
すべて読み終わってみると読後感は意外とすっきりしていることです。
そこはやはり作者の成せる業、なのでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
今日はミステリの短編集を紹介しました。
短編のいいところって、すきま時間にササッと読めるところですよね。
しかもこの作品、長編に劣らない実力のあるミステリが揃っています。
日々のすきま時間にぜひ読んでみて下さい。
ではまたあした~♪