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元図書館司書の読書日記。不定期更新。

今を生きる全ての人へのエール!『サラバ! 上・下』 西加奈子

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こんにちは!

今日は、2015年本屋大賞で2位、第152回直木賞受賞の

著者初の長編小説『サラバ!』を紹介します。

 

サラバ!上・下 / 西加奈子 (小学館

 

 

 

あらすじ

1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに―。

 

感想

 

主人公の半生を描いた作品

この作品の主人公は圷(あくつ)歩。圷家の長男だ。

圷家の家族構成は、父・母・姉・弟の歩である。

圷家の面々はとても個性的である。

母親というより女としての自分を大切にする実直で美人な母、

「わたしを見て!」という欲求から奇行に走る姉・貴子。

そんな正反対の母と姉の仲は最悪である。

そしてその諍いの板挟みにあう自己犠牲精神に溢れた父。

歩はそんな家族を見て、幼いころにはもう傍観者として生きる道を選ぶ。

そんな流れに身を任せるように目立たないように、姉のようにならないように生きる歩。

母譲りの綺麗な顔立ち、父譲りの背の高さで常にクラスで一番目立つ子の親友というポジションをゲットし、学生時代を順調に過ごす。

それは大阪でも、父の駐在先のエジプトでも変わらなかった。

しかし大人になった歩は、その生き方のせいで様々な困難に遭ってしまう。

 

スケールの大きい作品

主人公の歩は、父の仕事の関係でイラン生まれ。

一旦大阪に帰るが、小学校1年生の時にまた父の転勤で今度はエジプトに引っ越す。

これは、著者の西加奈子と同じである。

そのためか、イランとエジプトの描写が匂い立つように濃厚で、

住んでいた人だから書くことのできる文章だなと思いました。

特にエジプト・カイロ時代の話は情景が目に浮かんでくるようでうっとりしました。

 

やっぱりいい、「関西弁」

やっぱりいいです、関西弁。

今回も登場人物の多くが関西弁です。

西作品には関西の血が流れている、と思う。

特に母の実直なキャラクターに関西弁がベストマッチしてとてもいい感じです。

 

「サラバ」という言葉に隠された作者の想い

ここで「サラバ」とは何かを語るわけにはいかないのですが…

作者の西加奈子はこの「サラバ」という言葉を通して、この物語を通して、

現代に生きるたくさんの「歩」のような人たちに、エールを送っていると感じました。

もちろん、マイノリティーの「貴子」という人に向けても。

そんな作者の熱量がひしひしと伝わってくる作品です。

 

おわりに

今日は直木賞受賞作の『サラバ!』を紹介しましたがいかがでしたでしょうか?

著者渾身の長編作。私はあっという間に読み終えてしまいました。

私も私のサラバを強く信じて、生きていこうと思えました。

ぜひ読んでみて下さい!

 

 

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